「堀江被告、知らなさすぎ兼かわいそすぎ」ライブドア事件証人・久野 太辰被告への弁護側主尋問

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「堀江被告、知らなさすぎ兼かわいそすぎ」ライブドア事件証人・久野 太辰被告への弁護側主尋問

久野 太辰被告(港陽監査法人公認会計士)の証言は、田中 慎一「ライブドア監査人の告白」を読んでいると、理解が深まります。

証人の経歴

  • 平成 4 (1992) 年 4 月に、公認会計士登録
  • 平成 5 (1993) 年 8 月に、税理士登録
  • 港陽監査法人(平成 18 (2006) 年 6 月に解散)でライブドアの監査に関与して、小林 元被告(ゼネラル・コンサルティング・ファーム代表取締役公認会計士)の脱退に伴い、平成 15 (2003) 年 12 月にライブドアの監査責任者となった

ライブドア幹部の関係

  • 宮内 亮治被告(ライブドア元取締役)は、堀江 貴文被告(ライブドア前社長)に対して好きや嫌いの感情はない、と思う
    • 小林被告から、「宮内被告は、『いつでもライブドアやライブドアファイナンスを辞める』と言っている」と聞いた
      • 宮内被告には、愛社精神がなかった
  • 中村 長也被告(ライブドアファイナンス前社長)は、堀江被告を嫌っている、と思う
    • 田中 慎一氏(港陽監査法人公認会計士)から、「中村被告は、『堀江被告は嫌い』と言っている」と聞いた

損益取引と資本取引

  • 平成 13 (2001) 年の金庫株解禁により、自社株取引が損益取引から資本取引になったことは、会計士協会からの通達で知った
    • 自社株取引を資本取引とする場合、短期取引を想定していない、と思う
  • 親会社の連結決算時に、連結子会社による親会社株の売却益は資本取引に入れねばらならない
    • ファンドの場合は、ケースバイケース
      • 連結子会社とファンドでは考え方が違う、と思う
      • ファンドはキャピタルゲイン目的の短期売買なので、損益取引でもいい
      • ファンドが非連結であれば、資本取引である必要はない
      • ファンドの連結と非連結は、業務執行権の割合で考える

ファンド

  • 会計処理に、ダミー・ファンドという概念はない
  • 株式投資だけを目的とするファンドは、珍しくない
  • ファンドの過半数出資者と業務執行組合員に人的関係がないことはない、と思う
  • ファンドの業務執行組合員と一般組合員が相談していても、業務執行組合員が同意している、とは限らない
    • 宮内被告と中村被告がスキームを決めて、野口 英昭氏(エイチ・エス証券副社長/強制捜査後に沖縄で死亡)が従っていたら、同意していることになるだろう
    • 野口氏がスキームを決めて、宮内被告と中村被告が了承して依頼していたら、必ずしも同意していることにはならないだろう
    • スキーム考案者が異なると、結果も異なる
  • (「A 社の甲・乙・丙という役員のうち、乙・丙が自分たちの裁量で運用を考え、A 社が過半を出資するファンドを設立して、乙の親しい者を業務執行組合員としたとする。ファンドの利益の過半を A 社に戻し、残りを乙と丙が使った場合、ファンドは連結対象になるか?」との弁護側に対し)これだけではならない、と思う
    • 平成 16 (2004) 年には、ファンドを連結対象にする明確な基準がない
  • SBI ホールディングスが平成 18 (2006) 年 4 月 27 日に公表したリリース文では、連結子会社が業務執行組合員を務めるファンドの利益 468 億円を売上利益ではなく、特別利益にしている
  • ファンドを連結と非連結のどちらにするか、利益を資本勘定に入れるか損益勘定に入れるか、会計士でも判断が分かれる
    • 非連結対象でも、ファンドの投資先を調べて自社株売買を資本取引に入れるのは、現実的ではない
      • MMF の投資先から、自社株売買を洗い出さないのと同じ
  • 証人の独自見解ではなく、大分大学の椛田 龍三教授の「自己株式会計論」にも同様の記述がある
  • 平成 16 (2004) 年には、ファンドの分配金の会計処理について明確な基準がない

他社の会計処理

  • 株式会社フォトニクスは通常と異なる会計処理をしているが、会社の実体を反映しており違法ではない
    • 目的により、会計処理は変わる
  • ITX 株式会社の連結貸借対応表は通常の会計処理と異なるが、妥当
    • 会計処理は、一義的に決まるものではない

当時の問題意識

  • 1 月 24 日の証人から小林被告へのメールは、小林被告のメールを引用しているが、意味が分からなかった
    • 引用文に「携帯電話販売会社クラサワコミュニケーションズとの株式交換」とあるが、携帯電話販売会社クラサワコミュニケーションズを知らなかった
    • 「ありがとうございます」と返信したのは、情報提供に対する御礼
  • M & A チャレンジャー 1 号投資事業組合がライブドア株を売却していることは、赤坂 和仁氏(港陽監査法人公認会計士)から報告を受けた
    • ファンドを通した自社株売買には 3 つの問題があり、赤坂氏と議論したことがある
      1. インサイダー取引
      2. 子会社による親会社株取得(商法違反)
      3. ファンドは連結対象になるか
    • 赤坂氏のメールには「実質的に、どう見てもクロですから」とあるが、議論したときは深刻ではなかった
    • ライブドアやライブドアファイナンスには業務執行権がないので、ファンドは非連結とすることで一致した
      • ファンドが非連結であれば、商法違反の問題は生じない
    • 自社株取引を資本取引に入れる議論はしていない
      • ファンドが非連結であれば、関係ないから
  • 赤坂氏から証人を含む港陽監査法人公認会計士へのメールには「頭痛い」とあるが、誰かから「問題ある」と言われたこともないし、赤坂氏に何か言ったこともない
    • 赤坂氏が、何を言いたいか分からなかった
    • 「このファンドは、カモフラージュのためのダミー・ファンド」とは、後から組成した EFC 投資事業組合のこと
      • 会計上は何もカモフラージュできず、赤坂氏が何を思ったのか分からない
      • 資本取引にする、という指摘もなかった
    • ライブドアを嫌っていて、厳しく対応していた田中氏も受信者に含まれているが、メールに対する反応はなかった
  • 9 月に、M & A チャレンジャー 1 号投資事業組合の業務執行組合員がエイチ・エスインベストメントに変更されたことは、赤坂氏から報告を受けた
    • エイチ・エスインベストメントの代表取締役が野口氏であることは知っている
    • 「ライブドアかライブドアファイナンスが、ほとんど出資している」と赤坂氏から聞いたが、具体的な出資比率は知らない
    • 野口氏と宮内被告と中村被告は、オン・ザ・エッヂ(現・ライブドア)時代の同僚と聞いていた
      • 野口氏が退社した後の宮内被告や中村被告との関係については、知らない
  • VLMA 1 号投資事業組合は赤坂氏から報告を受けたが、VLMA 2 号投資事業組合は記憶にない
    • VLMA 1, 2 号投資事業組合の業務執行組合員であるバリュー・リンク社や大西 洋氏(バリュー・リンク社長)については、知らない

証人から小林被告へのメール

  • 平成 17 (2005) 年 5 月 20 日に、証人から小林被告へメールが送信された
    • 小林被告が、インターネット上のライブドアの噂を証人に報告したのが発端
    • 3 月の半期決算で、コンフィアンス・サービセスからの 20 〜 30 億円の売上根拠がなかったことが問題だった
      • 宮内被告や中村被告と議論していた
      • 前日の堀江被告や熊谷 史人被告(ライブドア元代表取締役)との打合せは、田中氏が行った
      • 堀江被告と宮内被告は、「監査法人を変える」と田中氏に言った
    • 証人から小林被告へのメールの「問題は社長ではなく M 氏」が、引用されている
      • 「M 氏」とは、宮内被告
      • 宮内被告と中村被告が、独善的にライブドアファイナンスの取引を決めていた
      • 証人より宮内被告と中村被告に接している田中氏も、そう言っていた
    • 「社長は細かいことを知らず、M 氏を信頼していただけのようです」とある
      • 堀江被告の了承を得ずに、宮内被告と中村被告が実行している印象だった
    • 「そんなの聞いてないよ状態」とある
      • IT ベンチャー企業メディア・リンクスとの架空取引や、出会い系サイト運営会社キューズ・ネットと消費者金融会社ロイヤル信販(現・ライブドアクレジット)からの架空売上のこと
      • 田中氏から、「堀江被告は、『メディア・リンクスの報道を見て、うろたえている』と言っている」と聞いた
    • 「M 氏・N 氏、危機感なさすぎ」とある
      • 「N 氏」とは、中村被告
      • 特別背任になるかもしれないのに、50 億円もの金額を堀江被告の知らないところで動かしている
      • 監査法人がなめられている
    • 「社長、知らなさすぎ兼かわいそすぎ」とある
      • 50 億円の資金移動を知らないのは、社長としていかがなものか

9 月期の監査

  • 平成 16 (2004) 年 11 月下旬に、堀江被告に報告した
    • 他の出席者は、宮内被告・熊谷被告・大橋 俊二弁護士(ライブドア監査役)・櫻井 四郎氏(ライブドア監査役)・前田 康行氏(ライブドア監査役)・田中氏
    • 問題点を文章にして証人が読上げ、堀江被告が熊谷被告と対策を議論した
    • 1 時間くらいで終了した
    • 堀江被告がきちんと解決する態度だったので、証人は質問しなかった
    • 「出会い系サイト運営会社キューズ・ネットや消費者金融会社ロイヤル信販(現・ライブドアクレジット)の売上が実体を伴っていない」「高すぎる」という指摘はしなかった